脳のゴミは「結果」だった? アルツハイマー病の原因をめぐる新常識と、私たちが今すぐできること
「脳内に『アミロイドβ』というゴミが溜まり、神経細胞を破壊する」――長年、アルツハイマー病のメカニズムはこう説明されてきました。この「アミロイド仮説」に基づき、世界中の製薬会社がゴミを大掃除する画期的な新薬を開発し、実際に脳内をきれいにすることに成功しました。
しかし、ここに奇妙なパラドックスが生じました。「脳はきれいになったのに、認知機能の低下が止まらない」という事例が相次いだのです。さらに、解剖すると脳内がアミロイドβだらけなのに、生前はまったく認知症の症状がなかった高齢者も多く見つかりました。
医学界はいま、大きなパラダイムシフトを迎えています。「アミロイドβは真犯人ではなく、単なる『燃えかす(結果)』に過ぎないのではないか?」という疑問です。
では、本当の火元はどこにあるのか。今、最も有力視されている容疑者の一つが、私たちのすぐ身近に潜んでいる。歯周病の原因菌「Pg菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)」です。
脳に侵入する「口の中の暗殺者」
近年、アルツハイマー病で亡くなった患者の脳から、Pg菌やそれが放つ強力な毒素が相次いで検出されています。本来、脳には有害物質をブロックする強固なバリアがありますが、Pg菌はそれをすり抜けて侵入する能力を持っています。
さらに衝撃的なのは、マウスにPg菌を慢性的に投与すると、脳内のアミロイドβが約3倍に急増し、記憶力が著しく低下したのです。
ここから、全く新しいシナリオが見えてきました。
脳は、侵入してきたPg菌という「外敵」と戦うために、抗菌作用を持つアミロイドβを防御物質として放出したのではないか。つまり、アミロイドβが悪者だったのではなく、脳が必死に感染と戦った「防衛戦の跡」こそが、あのゴミの正体だったという仮説です。
戦いが長引けば、脳は慢性的な炎症を起こし、やがて本命のドミノである「タウ蛋白」の崩壊へと繋がり、神経細胞は死滅していきます。火元は脳ではなく、「口の中」にあったのではと考えられるようにななり、米国国立老化研究所では約80億円の予算で歯周病菌関連臨床研究がおこなわれています。
最高の認知症予防は、歯周病治療から
この発見は、私たちに大きな希望を与えてくれるかもしれません。アルツハイマー病の根本治療薬は今なお開発の途上であり、費用も高額です。しかし、「Pg菌のコントロール」なら、私たちは今日からでも始められます。
毎日の丁寧なブラッシングや、歯科医院での定期的なクリーニングで歯周ポケットのPg菌を追い出すことは、単に歯を守るだけではなく、数十年にわたって脳へ送られ続ける「炎症の火種」を消す、認知症予防なのかもしれません。
Pg菌を保菌しているかは、保険外診療ですが、歯科医院で調べることが可能ですので、ご相談ください。